POINT OF VIEW ポイントオブビュー

中小企業診断士

片山 祐姫

不満、不安、不快、不便の解消


事業機会の見つけ方にはいろいろある。
未利用資源の活用、技術革新の活用、規制緩和による環境変化への対応、既存事業者の弱みへの着目、現状への顧客の不満への着目などである。
その中でも、顧客の不満へ着目することは、有効な事業機会の発見方法である。
いわゆる「不」に着目するという方法である。お客様の不満、不安、不快、不便を解消することが事業機会につながる。
これは、ある町の電器屋さんの話だ。

この電器屋さんは「住まいの110番」というキャッチコピーでリフォーム事業も手がけていたものの、ほかの町の電器屋さん同様、家電量販店に押され、生き残りの道を模索していた。
あるとき、月に一度の顧客向けイベントの開催後に、来場者アンケートに目を通していた社長は、一枚のアンケート用紙に目を留めた。そこにはこんな言葉が記されていた。
「うちには暗い部屋があり、天気のよい昼間でも電気を点けないといけないので憂鬱です。なんとかなりませんか」。
さて、少し考えてみてほしい。この言葉をアンケート用紙に見つけたときに自分だったらどうするか。
多くの人が「それはどうしようもないことではないか」と考えて見過ごしてしまうのではないか。
ところが、この社長は違っていた。
「確かにそうだ。部屋の中は暗くても、屋根の上には太陽の光がある。太陽の光を照明に使えないか」。
そう考えた社長は、アルミで軽い筒をつくり、内側を鏡面加工にすることで、太陽の光を室内に引き込むことを考えついた。

この実現は、もちろん簡単ではなかった。第一の関門は、室内まで太陽光を引き入れることのできる、反射率の高い素材探しである。
まずは、国内で素材を探してみたが、これはといういい素材を見つけることができず、海外に目を転じた。するとオーストラリアの会社に同じ考え方の製品があることを知り、日本の総代理店契約を締結する。
事業を立ち上げたあとも第2、第3の問題が発生した。平屋の多いオーストラリアとは異なり、日本では2階建て以上の家が多く、日本独自での施工技術開発が必要となった。また、種類の多い、日本の屋根材に対応するための周辺部材の開発も必要になった。こうした問題に一つひとつ取り組み、製品化の問題を解決していったのである。
この製品の名前を「スカイライトチューブ」という。2017年現在、事業化から、すでに13年が経過し、全国での施工実績は7000件に達している。
事業立ち上げ当初は、住宅用としてスタートしたが、現在では、大手企業の工場や倉庫にも設置されるようになった。
小学校の理科の教科書にも太陽光の利用の一例として紹介された。掲載された写真は、事業化のきっかけをくれた、アンケート記入の人の自宅だった。
見過ごされがちな顧客の不満の声。そこには新しい事業機会が隠れているのである。

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